はじめに
WSUS(Windows Server Update Services)を社内で導入したものの、「更新が配信されない」「同期に時間がかかる」「クライアントが反映されない」といったトラブルは多い。こうした“遅さ”には、Microsoft公式ドキュメント(WSUS Troubleshooting)にも記載されているように、いくつかの共通した原因がある。ここではその代表的な要因と、実践的な対策を紹介する。
① ポート設定ミス:WSUSはTCP 8530/8531を使う
WSUSサーバーは標準で HTTP: 8530/HTTPS: 8531 を使ってクライアントと通信する。
原因: ファイアウォールやプロキシでこのポートが閉じていると、クライアントが更新を取得できない。
対策: クライアントPCから telnet <WSUSサーバーIP> 8530
で疎通確認。必要ならファイアウォールのルールに明示的に追加。
② BITS(バックグラウンドインテリジェント転送サービス)の影響
WSUSは更新ファイルをBITSを使って転送する。が、BITSの帯域制御設定が厳しすぎると、更新が極端に遅くなる。
対策: ローカルグループポリシーの「BITS帯域制御」を確認し、必要に応じて制限を緩める。また、VPN経由の転送時も速度が落ちやすいので注意。
③ IISの構成エラーまたはキャッシュ不整合
WSUSはIIS上で動作するため、IIS設定ミスやキャッシュの不整合が原因になる。
対策:
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WSUS Administration
サイトが「スタート」状態か確認(IISマネージャー) -
コンテンツディレクトリ(
C:\WSUS\WsusContent
)とデータベースの整合性をwsusutil.exe checkhealth
でチェック
④ 同期が極端に遅い or 失敗する(Microsoft Updateとの接続)
原因: Microsoft Updateサーバーへの通信に失敗しているケース。特にProxy配下や国別IP制限がある場合。
対策:
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Proxy
設定が正しいかwsusutil configuressl
やnetsh winhttp
コマンドで確認 -
Microsoftの更新元URLがブロックされていないか、公式URL一覧(公式リスト)をもとに通信確認
⑤ クライアントの登録が反映されない
WSUSが「遅い」と感じるのは、クライアントがそもそもサーバーに登録されていない場合も含まれる。
対策:
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クライアント側で
gpupdate /force
→wuauclt /reportnow
を実行 -
WSUSの「未割り当てクライアント」グループに表示されているか確認
-
C:\Windows\WindowsUpdate.log
(Windows 10 以降は PowerShell経由で出力)を確認してエラーコードを調査
まとめ
WSUSの「遅さ」や「不安定さ」は、通信経路・IIS構成・BITS設定・クライアントポリシーなど多面的な要因が重なって発生する。Microsoft公式の推奨構成とベストプラクティスを定期的にチェックし、疎通確認/ログ調査/自動監視の仕組み化を通じて安定運用を図ることが重要になる。