仕事で「幸せ」を感じるために必要なことをエビデンスのある研究から考えてみた[人生/生き方]

目次

はじめに

普段はITやビジネススキル、マインドセットなど比較的実用な記事を書いていますが、本記事は実験的にコラムを書いてみます。
よく読まれている記事はこちら。

はじめに突然ですが、「私と仕事どっちが大切なの?」と聞かれたらなんと答えるでしょうか?僕はそんな面倒くさい質問をしてくる女性とは関わらない、という方もちょっと自分事として答えを考えてみてください。記事の最後に同じ質問を聞きます。MafRak
書きたいこと

不労所得をもっている方以外は、「人生」と「仕事」は切り離すことができない関係にあると思います。私は、根本的な性格として「何事も楽しみにかかる」というマインドを大切にしていますが、ふと、「仕事を通して幸せを感じるにはどのようなときか?」という疑問が湧きました。最新の研究結果を基に、どうすれば仕事で幸せを感じることができるのか、私の意見を整理します。

そもそも人間にとっての幸せとは?

まずは、仕事に限らず人間にとっての幸せとは何か?を調べてみました。
スピリチュアルな領域は得意ではないので、極力実証を経た研究成果のある情報を探りました。
そこで見つけたのが「人生を最も生きる価値あるものにするのは何か」に関する科学的な研究分野としてポジティブ心理学という一分野についてです。
ポジティブ心理学を専門としているマーティン・セリグマン博士によれば、
「幸せの方程式 Happiness formula」と呼ばれる法則があるとしています。

以下がその「幸せの方程式 Happiness formulaです。

H = S + C + V

H:永続的な幸せ(一過性のものではない幸福)
S:遺伝子(幸せを感じやすいかどうか遺伝的な性質)
C:自身の人生を取り巻く環境
V:自分がコントロールできる振る舞い(意図的な行動)

ポジティブ心理学では、幸せ(H)を構成するS、C、Vについて、それぞれ以下のパーセンテージで幸せ(H)に影響を及ぼす因子としています。
S:遺伝子→50
C:環境→10
V:意図的行動→40

これをみると、「遺伝子が一番割合が大きいじゃないか….」と先天的な資質に依る影響が大きいと感じてしまうかもしれませんが、最も重要なのは、C:環境とV:意図的行動で幸せの半分の因子を占めており、且つV:意図的行動は40%を占めるという点です。

研究結果の帰結としては、人が選択可能な幸せの最大要素は「意図的行動」であると言えると考えます。つまり、「幸福度は意図的行動によって向上させることができる」ということです。

マーティン・セリグマン博士のTEDプレゼンテーションはこちら

参考:ポジティブ心理学について

What makes you happy, and what doesn’t: Easily explained

「意図的行動」ができないから仕事で幸せを感じることができない

幸せになるために「意図的行動」が重要なことは分かりましたが、仕事において「意図的行動」を実践できているでしょうか?
私を含め、多くの方が仕事で「意図的行動」を行えていないからこそ、悩み、挫折したり、心を壊してしまったり、閉じてしまったりという経験があるのではないでしょうか。
つまり、仕事で「意図的行動」ができていれば、仕事を通して幸せを感じることができるのだろうと推論することが出来ます。

Googleの生産性向上計画プロジェクト・アリストテレスとは

ちょっと脱線(最後は収束します)が、Googleの生産性向上計画「プロジェクト・アリストテレス」についてお話します。

「働く」をもっと良いものに。グーグルをはじめとするさまざまな組織の働き方の先進事例、研究、アイデアを集めました。ダイバーシティ・女性活躍・働き方改革施策に役立つヒントをご紹介します。

プロジェクト・アリストテレスとは
Googleが自社の従業員の働き方を徹底的に観察することで、チームのパフォーマンスを最大化するための要因を見つけるプロジェクトです。

以下の5つがその答えであり、上から重要な順です。

心理的安全性: 心理的安全性とは、対人関係のリスクの重要性に対する認識、または、無知、無能、否定的、破壊的であるとみなされるリスクを取っても安全だと感じることです。高い心理的安全性を持つチームでは、チームメンバーは周りのメンバーに対してリスクを冒しても安全だと感じています。彼らは、間違いを認めたり、質問したり、新しいアイデアを提示したりしても、恥をかかされたり、処罰されたりすることはないと確信しています。

信頼性: 信頼できるチームでは、メンバーは質の高い作業を時間通りに確実に完了します(それに対して – 責任を回避する)。

構造と明快さ: 高いチームパフォーマンスを得るためには個々人が、仕事への期待、その期待を達成するプロセス、そして仕事の成果、を理解することが重要です。目標は個人レベルまたはグループレベルで設定することができ、具体的、挑戦的、達成可能でなければなりません。Googleでは、目標と主な成果(OKR)を用いることで、短期的および長期的な目標を設定し、それを周囲に伝えるのに役立てています。

意味: 仕事自体や仕事の見返りに対して目的意識を持つことは、チームのパフォーマンスにとって重要です。仕事の意味は個人的なものであり、財政の安全性、家族のサポート、チームの成功支援、各人の自己表現などさまざまです。

影響(インパクト): 「自分の仕事が優れていて、チームにとって重要である」と思えることは、チームにとって重要です。自分の仕事が組織の目標に貢献していることを確認することは、その認識を助けてくれます。
引用:https://qiita.com/ino-shin/items/75e32c9202ae5c29ad5c

プロジェクト・アリストテレスでは、

チームのパフォーマンスを最大化するのはリーダーが厳しい/甘い、チームメンバーの学歴が高い/低い、IQが高い/低い、仲がよい/仲が悪いといった要因ではなく、特に重要なのは心理的安全性(Psychological Safety)であると結論付けました。
この心理的安全性とは、「こんなこと言ったら怒られるだろうか」や「これをやったらバカにされるだろうか」といった行動・言動の障壁を無くし、お互いに認める、評価する、褒めるといったお互いにリスクをとっても安全であるという前提をもつということだと思います。
それによって、難しい課題解決をする際に意見を言いやすくなったり、ミスをしてもすぐに相談できる、他メンバーに助けを求めやすくなるといった仕事のやりやすさに繋がっていきます。

仕事における幸福度をあげる方法

ポジティブ心理学の幸せの方程式Googleのプロジェクト・アリストテレスから導く仕事における幸福度をあげる方法は、
心理的安全性がある状態で意図的行動を繰り返し試すことで、小さな成功体験の積み上げを実感でき、仕事を幸せと感じられる、のではないかと考えます。

足りないのは、許容し称える文化

「ゲームは褒める装置」という言葉があります。詳細は以下引用をお読みください。

「本日いらしているお母さんお父さん方は、なんでお子さんがTVゲームに『ハマる』のか、全くわからない方がほとんどだと思います。今日はその辺りについて、TVゲームを作っている側のワタシが、その仕組みについて解説させていただこうかと思っています。なにせ、子供をゲームにハマらせようと、あれこれ知恵を絞っている悪人(笑)というか張本人なワケですから、これ以上に的を射た話はないと思いますよ。それではご静聴よろしくお願い致します。

「まずお話を始める前に、ちょっと皆さんに質問をさせていただきたいと思います。よーく思い出してから答えてくださいね。――昨日、お子さんを『褒めた』という方、いらっしゃいましたら挙手願えますか?それじゃあ、もうちょっと範囲を広げて、今週、お子さんを『褒めた』という方?

「どうやら、あまり多くはないようですね。いや、なんでそんな質問をさせていただいたのかというと、実はここに、子供がゲームにハマる本質があるんですよ。最初っから手の内バラしちゃってますけど(笑)。

「実はTVゲームというのは、遊んでいる人間を『褒める装置』なんです。問題を出して、成功したら褒める。失敗したらペナルティを与える。我々はこれを『ゲーム性』と呼んでいますが、これがまさに、TVゲームという装置の本質なんです。

「誰だって、褒められれば嬉しいですよね? ところが実生活では、褒められる体験というのはあまりにも少ない。お母さん方、お子さんを叱ってばかりいませんか? 『またイタズラばかりして!』とか、『悪い点ばかり取ってきて!』とか。叱る方ばかりが多くなって、褒める方というのはついつい疎かになりがちです。

「でも、ゲームを作っている我々は、なるべく『褒めよう褒めよう』と思いながらゲームを作っているんですよ。毎日褒めたい。毎回褒めたい。出来れば『10秒に1回』、いや『60分の1秒に1回は褒めたい』、そう思いながら、プログラムを作っているんです。さすがに親御さんでも、60分の1秒に1回褒めるのは難しいでしょう(笑)。疲れちゃいますもんね。でもゲームというのはコンピュータですから、疲れずに褒め続けられるんです。

「とは云っても、褒められるだけじゃ飽きちゃいますよね。人間というのは刺激に慣れる習性がありますから、褒められ続けると『またかよ』とウンザリしちゃう。そこで我々は、出来る限り色々な行動に対して褒めようと、手を変え品を変え、色々なバリエーションを用意しているワケです。

「例えばさっき、『またイタズラばかりして!』と云いましたけれど、我々は、同じイタズラでも、創意工夫のある『褒められるべきイタズラ』というものがあると考えてます。大人からしたら、どう見てもイタズラはイタズラで、叱るしかないんですが…というかワタシだって叱りますけど(笑)、でもゲームの中では、創意工夫に対して褒めてあげる。これは、実生活ではあまりないコトですし、だからこそ、子供が惹き付けられるんですね。

「そしてもう一つ、ちゃんと叱ってあげる、というのも重要です。『ちゃんと叱る』というのは、実はすごく難しいコトなんです。子供がハマるよく出来たゲームというものは、ちゃんと叱るのが上手いゲームなんです。ここでは『叱る』と云ってますけど、要は『ペナルティを与える』というコトですか。『なんで失敗したかを理解させながらペナルティを与える』これはとても難しいコトなんですけれど、それが出来れば逆に『褒める』コトも活きてくるワケです。『褒める』と『叱る』とがペアになると、ものすごい威力を発揮しますね。
引用:http://www.0600design.com/archives/2005/11/post_136.html

誰もが子どもだった頃は、両親やおばあちゃん、おじいちゃんに可愛がられて育てられていたはずです。ほんの少しのことができるようになっても、簡単に褒めてもらえる。褒めてもらえるから、またやってみようという気持ちになる。
まさに、意図的行動に満ちた幸せを噛み締めていた時間だったように思います。(考えてみれば子どもの頃に「自分が幸せなのか?」などと考えもしなかったので幸福だったのだろうと思います…笑)
ところが、学校生活や大人になってからの社会人生活はそうはいきません。褒められるためには他の人と比較して多大な労力を投資する必要がありますし、その報いが必ず得られるわけでもないです。競争、比較、規律を重んじる世界では「褒められる、認められる」という体験自体多くないと感じます。
つまるところ、現実世界をゲームに例えると「無理ゲー」なのだと思います。報酬とペナルティのバランスが悪く、どうすれば褒めてもらえるのか?が不規則で不明瞭です。現実世界をモデリングしたのがゲームの世界ですが、今やゲームの世界のほうが現実世界よりも心理的安全性が高い状態で意図的行動を積み重ねることができます。
私の同僚に「仕事の話だとイマイチやる気が感じられないが、ゲームの話になると饒舌なエンジニア」がいます。饒舌になるテーマというのは、自分なりの考えをもっていたり、その考えに沿って何かを試したり行動したことがある、ということ、つまり「意図的行動」ができているテーマということです。

最後に

これまでの話から伝えたいことを一文で要約すると、
仕事における心理的安全性が損なわれていることで、意図的行動ができず、褒められない・認められない。だから仕事が面白くない、幸せと感じられない。
ということです。
褒める装置としてのゲームのメリットを仕事に適用できたらよいのかな、と考えてはみたものの、高い精度で相手を認める、評価する、褒める、挑戦させるといったことが人間は苦手だと思います。だからこそ、近い将来には人が人を評価するのではく機械に人を評価させる仕組みをAIで実現できれば良いのではないかなと考えています。(人の労働力を機械に置換するのではなく、人が苦手なことを機械にやらせる思想で)

前向きな意見で話を締めると、自分が意図的行動をとれるのはどのようなタイミングか?どうすればそのタイミングを増やすことができるのか?を日々考えるだけで、幸せに近づいていけるのではないかな、と考えています。