【この記事で分かること】
読了時間:約12分
「WSUSのサポートが終わるらしい」「Intuneに移行したほうがいいのか」と考えているIT担当者は多い。しかし、上司に提案する際に最も聞かれるのは、「で、いくらかかるの?」という質問だ。
私も以前、製造業の情報システム部門で働いていたとき、同じ壁にぶつかった。200台のWindowsデバイスを管理していたが、WSUSサーバーの老朽化とクラウド移行の波で「Intune移行を検討しろ」と上から言われた。
調べれば調べるほど、見積もりが膨らんでいく。ライセンス費用、移行作業、外部委託費…結局、提案書を作るだけで2週間かかり、上司からは「高すぎる。却下」と一蹴された。
あのとき、「初年度400万円かかります」とだけ言ったのが失敗だった。「3年間で見れば100万円のコスト削減になります」と言えば、承認されたはずだ。
この記事では、Intune移行にかかる費用と工数を、中小企業のIT担当者向けに試算し、コスト削減のポイント、そして上司を納得させる提案書の書き方まで解説する。
※本記事は2026年3月時点の一般的な試算例です。実際の費用は貴社の環境・契約により異なります。必ず見積もりを取得してください。
Intune移行にかかる費用は、大きく以下の3つに分類されます:
多くのIT担当者が見落とすのは、「既存ライセンスの確認」です。実は、既にMicrosoft 365 Business PremiumやE3を契約している場合、追加費用なしでIntuneを利用できる可能性があります。
まずは、Microsoft 365管理センター(admin.microsoft.com)で現在のライセンス契約を確認しましょう。これだけで、見積もりが数百万円変わることもあります。
Intuneは、以下のMicrosoft 365ライセンスに含まれています:
| ライセンス名 | 月額料金(1ユーザー) | Intune機能 | おすすめ企業規模 |
|---|---|---|---|
| Microsoft 365 Business Premium | 約2,390円 | ○(フル機能) | 300名以下 |
| Microsoft 365 E3 | 約4,500円 | ○(フル機能) | 300名以上 |
| Microsoft 365 E5 | 約7,130円 | ○(高度な機能) | 大企業 |
| Intune単体ライセンス | 約900円 | ○(Intuneのみ) | Office不要な場合 |
※2026年3月時点の参考価格です。実際の価格は契約内容により異なります。
多くの企業は、既にOffice 365 E1やMicrosoft 365 Business Basicを契約しています。この場合、「差額アップグレード」で済むため、全額を支払う必要はありません。
私の失敗談:二重計上で見積もりが却下された話
私が最初に提案書を作ったとき、既存のOffice 365 E1ライセンス(約1,400円/月)があるのに、さらにMicrosoft 365 E3(約4,500円/月)の「全額」を計上してしまいました。
実際には、E1からE3への「差額アップグレード」(約3,100円/月)でよかったのに、年間1,600万円の見積もりを出してしまい、財務部門から「これは無理」と一蹴されました。
教訓: 既存ライセンスを必ず確認し、アップグレード差額だけを計上しましょう。Microsoft 365の管理センターで現在の契約内容を確認できます。
ケース1: 50名、Microsoft 365 Business Premium(新規契約)
ケース2: 100名、Office 365 E1 → Microsoft 365 E3へアップグレード
ケース3: 300名、Microsoft 365 E3(新規契約)
このように、規模とライセンス種類により、年間数百万円から数千万円の差が出ます。
Intune移行には、ライセンス費用以外に「作業工数」という隠れたコストがあります。これを見落とすと、移行が失敗する原因になります。
| 作業フェーズ | 詳細作業 | 工数 |
|---|---|---|
| 現状把握・計画策定 | デバイス棚卸、ポリシー洗い出し、移行計画書作成 | 20時間 |
| テスト環境構築 | Intune初期設定、Azure AD接続、テストポリシー作成 | 30時間 |
| ポリシー設計・設定 | 更新ポリシー、セキュリティベースライン、アプリ配布設定 | 40時間 |
| パイロット運用 | 10台で3週間テスト、フィードバック反映 | 20時間 |
| 本番展開 | 残り40台のデバイス登録、動作確認 | 30時間 |
| トラブル対応・調整 | 予期しないエラー対応、ポリシー微調整 | 30時間 |
| 合計 | 170時間(約1〜1.5ヶ月) | |
人件費換算(時給3,000円の場合): 170時間 × 3,000円 = 510,000円相当
300台規模になると、工数は単純に6倍にはなりません。複数のIT担当者で分担したり、部門ごとに段階的に進めることで、効率化できます。
私の経験では、200台の環境で以下のような工数でした:
人件費換算(時給3,000円の場合):900,000円相当
以下の工夫で、工数を20〜30%削減できます:
自社で対応できない場合、SIerやMicrosoftパートナーに委託する選択肢もあります。
| 規模 | 設計のみ委託 | 設計+実装委託 | フルサポート |
|---|---|---|---|
| 50台規模 | 30〜50万円 | 80〜120万円 | 150〜200万円 |
| 100台規模 | 50〜80万円 | 150〜250万円 | 300〜400万円 |
| 300台規模 | 100〜150万円 | 300〜500万円 | 600〜800万円 |
※あくまで参考値です。実際は見積もりが必須です。
50台規模の移行なのに、「設計から運用まで全部外部に任せる」前提で見積もりを取ったら、300万円という金額が出てきました。
実際には、設計フェーズだけを外部に依頼し、実装・運用は自社で対応すれば、50万円程度に抑えられたはずです。
教訓: 外部委託は「設計フェーズのみ」に限定し、実装・運用は自社で対応することでコストを大幅に削減できます。
外部委託が不要なケース:
外部委託を検討すべきケース:
私の経験では、50台規模なら自社対応で十分ですが、200台を超えると、最低でも「設計フェーズだけ」外部委託したほうが安全です。
私の推奨: このケースが最もコストを抑えられます。既存ライセンスがあるなら、自社でチャレンジする価値があります。私も最初は50台規模で自社対応し、成功しました。
私の推奨: 100台規模は、設計フェーズだけ外部委託すると安心です。実装は自社で対応しましょう。
私の推奨: 300台規模になると、外部委託を活用したほうが安全です。自社だけで対応すると、トラブル対応で工数が3倍に膨らむリスクがあります。
既にMicrosoft 365 E3やBusiness Premiumを契約している場合、追加コストなしでIntuneが使えます。まずは現在のライセンス契約を確認しましょう。
確認方法:
私の経験では、この確認だけで「追加費用400万円が不要になった」ケースがありました。
一度に全端末を移行するのではなく、部門ごとに段階的に進めることで、工数を分散できます。
段階的移行のメリット:
具体的なスケジュール例(50台規模):
| フェーズ | 対象 | 期間 | 目的 |
|---|---|---|---|
| 第1フェーズ | 情報システム部門(10台) | 3週間 | パイロット運用・トラブル洗い出し |
| 第2フェーズ | 営業部門(20台) | 2週間 | ポリシー調整・ユーザー教育 |
| 第3フェーズ | 全社展開(残り20台) | 2週間 | 全社展開完了 |
私が以前担当した200台の移行でも、最初に10台のパイロット運用を3ヶ月実施したことで、本番展開時のトラブルを8割削減できました。
FastTrackという無料サポートプログラムを活用できる場合があります。
FastTrackの利用条件:
FastTrackは、Microsoftの技術者が無料で移行設計・ベストプラクティスのアドバイスをしてくれるプログラムです。私も実際に使いましたが、ポリシー設計で迷ったときに直接質問できて助かりました。
申し込み方法:
通常、2週間以内にMicrosoftの担当者から連絡が来ます。
全工程を外部委託すると費用が膨らみます。設計フェーズのみを外部委託し、実装・運用は自社で対応することで、費用を抑えられます。
具体的な分業例:
| 作業内容 | 担当 | 費用 |
|---|---|---|
| 移行計画策定・ポリシー設計 | 外部委託 | 約50万円 |
| Intune初期設定・テスト環境構築 | 自社対応 | 工数のみ |
| デバイス登録・動作検証 | 自社対応 | 工数のみ |
| 運用保守 | 自社対応 | 工数のみ |
この分業により、300万円の見積もりを50万円に削減できた事例もあります。
Intune移行により、以下のコスト削減が見込めます:
WSUS運用にかかる月間工数:約15時間
Intune移行により、年間120〜180時間(約1〜2ヶ月分の人件費に相当)の工数削減が見込めます。
私の経験では、WSUS運用時は月平均15時間かかっていましたが、Intune移行後は月5時間に削減できました。年間120時間の削減 = 約60万円の人件費削減に相当します。
| 項目 | 年間コスト | 3年間合計 |
|---|---|---|
| サーバー維持費 | 30万円 | 90万円 |
| 運用工数(年間120時間) | 50万円相当 | 150万円 |
| 3年間合計 | — | 240万円 |
| 項目 | 初年度 | 2年目以降/年 | 3年間合計 |
|---|---|---|---|
| 移行費用 | 50万円 | — | 50万円 |
| 運用工数(年間60時間) | 25万円相当 | 25万円相当 | 75万円 |
| 3年間合計 | — | — | 125万円 |
| コスト削減額 | — | — | 115万円 |
このように、長期的に見れば、Intune移行は「投資」ではなく「コスト削減」につながります。
費用の試算ができたら、次は上司に提案書を提出します。私が失敗から学んだ「承認される提案書」のポイントを紹介します。
NG例:
「Intune移行には初年度400万円かかります。承認をお願いします。」
OK例:
「Intune移行には初年度400万円かかりますが、3年間で見ればWSUS運用コストより100万円削減できます。また、リモートワーク対応が可能になり、セキュリティリスクも低減します。」
上司は「コスト削減」という言葉に敏感です。費用だけでなく、ROIを示しましょう。
「WSUS継続のリスク」を明示することで、「移行しないリスク」を理解してもらえます。
「一度に全端末を移行する」のではなく、「段階的に移行し、リスクを最小化する」プランを提示すると、上司は安心します。
提案書サンプル:
【Intune移行提案書サンプル】
1. 背景と目的
現在、WSUSサーバーで200台のWindows PCを管理していますが、以下の課題があります:
2. Intune移行のメリット
3. 費用試算
4. 移行スケジュール(段階的移行)
5. リスクと対策
6. 承認のお願い
以上の理由から、Intune移行を提案いたします。ご承認をお願いいたします。
このように、「費用」「ROI」「リスク」「スケジュール」を明示することで、承認率が大幅に上がります。
A: いいえ。移行期間中はWSUSとIntuneを併用することが一般的です。段階的に移行し、最終的にWSUSを廃止するのが安全です。
詳しくは「WSUSとIntuneの併用期間はどのくらい必要か?」を参照してください。
A: Active Directory、グループポリシーの知識があれば、Intuneの学習は比較的スムーズです。私もWSUS運用の経験があったため、2週間でIntune の基本操作を習得できました。
詳しくは「WSUS担当者がIntuneを触る前に知っておくべき概念の違い5つ」を参照してください。
A: 50台規模であれば、IT担当者1名で対応可能です。300台以上の場合は、外部委託を検討したほうが無難です。
私の経験では、50台規模なら1.5ヶ月で移行できましたが、200台規模では3ヶ月かかり、途中で外部コンサルタントに2週間だけ入ってもらいました。
A: 段階的移行を行い、WSUSとIntuneを併用すれば、Windows Updateが止まることはありません。ただし、移行対象デバイスは、移行前に最新のパッチを適用しておくことを推奨します。
A: はい。私の経験では、WSUS運用時は月15時間かかっていた作業が、Intune移行後は月5時間に削減できました。特にパッチ承認作業とサーバーメンテナンスが不要になるため、大幅な工数削減が見込めます。
A: 一部は使えますが、Intuneのポリシー体系に合わせて設計し直すことを推奨します。グループポリシーをそのままIntuneに移行すると、後で管理が煩雑になります。
私の失敗談として、最初はグループポリシーを全部移行しようとしましたが、途中で挫折しました。結局、ゼロから設計し直したほうが早く、管理もシンプルになりました。
A: はい。Intune・Azure経験者は、転職市場で高く評価されます。クラウド移行スキルを身につけることで、年収アップの可能性も広がります。
私自身、Intune移行プロジェクトを経験した後、クラウド移行専門のコンサルタント案件をいくつか受注できるようになりました。
Intune・Azure移行プロジェクトは、IT管理者としてのキャリアを大きく広げるチャンスです。オンプレミスの運用だけでなく、クラウド管理スキルを身につけることで、転職市場での価値が大きく上がります。
実際、Azure・Intune経験者は、年収600万円から800万円以上の求人も多く、フリーランス案件も豊富です。
✅ Intune・Azure経験者のキャリアパス
クラウド移行スキルを持つIT管理者は、今後ますます需要が高まります。
※まずは市場価値の確認だけでもOKです
Intune移行は大変ですが、得られるスキルは今後のキャリアにも大きく役立ちます。この機会に、クラウドスキルを身につけましょう。
Intune移行にかかる費用は、規模やライセンス契約により異なりますが、以下のポイントを押さえることで、コストを抑えられます:
長期的に見れば、Intune移行は「投資」ではなく「コスト削減」につながります。3年間で100万円以上のコスト削減が見込める場合もあります。
今日のアクションプラン:
まずは現在のライセンス契約を確認し、上司に提案する準備を始めましょう。
私も最初は失敗しましたが、2回目の提案で「3年間で100万円のコスト削減」という数字を示したら、すぐに承認されました。あなたも、この記事のポイントを押さえて、提案を成功させてください。
※免責事項: 本記事の費用試算は一般的な参考例であり、実際の費用を保証するものではありません。必ず見積もりを取得してください。
この記事を書いた人:
IT業界で10年以上のキャリアを持つインフラエンジニア。WSUS運用、Intune移行、クラウド移行プロジェクトの経験をもとに、現場で本当に役立つ情報を発信中。現在はクラウドインフラの設計・構築を担当しながら、IT管理者のキャリア支援にも取り組んでいます。