「フリーランスになれば年収が上がる」——この言葉を鵜呑みにして、2022年3月、私は7年勤めたSIerを退職した。当時の年収は550万円。フリーランスになれば月単価70万円で年収840万円になると計算していた。
結果は惨敗だった。
独立して最初の3ヶ月、案件が全く取れなかった。貯金を切り崩し、焦ってエージェントに登録したものの、提示された案件は月単価45万円。「スキル不足」と言われた。結局、その案件を受けざるを得ず、初年度の年収は400万円。会社員時代より150万円も下がった。
何が間違っていたのか?答えは「準備不足」と「営業戦略の欠如」だった。
この記事では、私の失敗を踏まえて、フリーランスエンジニアとして年収800万円を超えるために「本当に必要なスキル」と「案件獲得の具体的な営業戦略」を解説する。教科書的な理想論ではなく、現場で通用する実践的な内容だ。
フリーランスエンジニアの平均年収は約600万円〜800万円とされているが、これは「稼働率100%」の前提だ。実際には案件が途切れる期間があり、実質的な稼働率は80%程度になる。
案件単価の目安は以下の通り:
年収800万円を超えるためには、月単価70万円以上の案件を安定して受注することが必要になる。ただし、ここには「安定して」という条件が付く。
私の失敗:「単価」だけ見て「稼働率」を無視した
2022年、私は月単価70万円の案件を取れれば年収840万円だと計算していた。しかし、実際には:
実質的な年収は270万円。会社員時代の半分だった。稼働率を無視した計画は破綻する。
正社員のITエンジニアの平均年収は約500万円〜700万円(経験5年程度)。一方、フリーランスは月単価70万円×12ヶ月で年収840万円となるが、以下のコストを考慮する必要がある。
手取りで考えると、正社員の年収600万円(手取り約470万円)とフリーランスの年収800万円(手取り約450万円)がほぼ同等になる。つまり、年収800万円は「正社員より少し稼げる」ラインだ。
私の実例:年収800万円でも生活は楽にならなかった
2024年、私はようやく年収800万円を達成した。しかし、手取りは約450万円。会社員時代(年収550万円、手取り約420万円)より月3万円程度増えただけだった。「独立して自由になれる」と思っていたが、現実は税金と社会保険料の支払いに追われる日々だった。
年収800万円を超える案件は、以下の技術スタックを持つエンジニアに集中している。
バックエンド(高需要)
フロントエンド(高需要)
データエンジニア・機械学習(超高需要)
インフラ・SRE(安定需要)
これらのスキルのうち、複数を組み合わせられるエンジニアは高単価案件を獲得しやすい。例えば、「バックエンド開発 + AWS構築 + CI/CD構築」ができれば、月単価80万円以上も現実的だ。
私の失敗:PHPだけでは戦えなかった
私は会社員時代、PHP(Laravel)でWebシステムを7年開発していた。「7年の経験があれば高単価案件を取れる」と思っていたが、エージェントからの評価は厳しかった。
「PHPだけだと月単価50万円が限界です。AWSやDockerの実務経験はありますか?」
答えはNOだった。インフラはインフラ担当者に任せきりで、自分ではサーバーを立てたことがなかった。結果、提示された案件は月単価45万円のレガシーPHP案件。モダンな技術スタックを学んでいなかったツケが回ってきた。
その後、2023年に独学でAWSとDockerを学び、2024年にはTypeScript + React + AWSの案件を月単価75万円で獲得できた。市場価値の高いスキルを学ぶことで、単価は30万円も上がった。
技術力だけでは高単価案件は取れない。クライアントが求めるのは「自走できるエンジニア」だ。
特に、リモート案件では文字ベースのコミュニケーション能力が重視される。「技術的に詳しいが、説明が分かりにくい」エンジニアは敬遠される。
私の失敗:「自走できる」の意味を理解していなかった
2022年7月、初めて獲得した案件で、私は大失敗をした。クライアントから「ログイン機能を実装してください」という指示を受けたとき、私は「仕様書はありますか?」と聞いた。
クライアントの反応は冷たかった。「仕様書?自分で考えてください。要件は『ユーザーがログインできること』です。」
会社員時代は、詳細設計書があり、それに従ってコードを書いていた。しかし、フリーランスでは「要件を聞いて、自分で設計し、実装する」ことが求められる。
この案件では、以下のような自走スキルが必要だった:
当時の私にはこれができず、何度もクライアントに確認してしまい、「手のかかるエンジニア」という評価を受けた。契約は3ヶ月で終了した。
この失敗から、私は「要件定義」「設計」「テスト」を自分で考える習慣を身につけた。2024年の案件では、クライアントから「何も言わなくても進めてくれるので助かる」と評価され、契約が1年延長された。
競合が少ない特化スキルを持つと、年収1000万円超えも視野に入る。
ただし、これらの領域は「経験者のみ」の案件が多いため、正社員時代に実務経験を積んでおく必要がある。
実例:機械学習エンジニアの知人の年収
私の知人(35歳)は、正社員時代に3年間、Pythonで機械学習モデルを開発していた。フリーランスになった初年度から月単価90万円の案件を獲得し、年収1080万円を達成した。
彼曰く、「機械学習エンジニアは需要に対して供給が少ないから、実務経験があれば高単価案件が取りやすい」とのこと。ただし、独学だけでは難しく、正社員時代に「実務経験」を積むことが必須だった。
フリーランス初心者が安定して案件を獲得するには、エージェントの利用が最も効率的だ。私も2022年の失敗後、エージェントに登録して案件を安定獲得できるようになった。
おすすめのフリーランスエージェント
エージェントを利用するメリットは、営業の手間が省けること、契約トラブルのリスクが減ること、継続案件を紹介してもらえることだ。手数料は案件単価の10〜20%程度だが、営業コストと考えれば妥当な範囲だ。
私の失敗:エージェント選びを間違えた
2022年、私は焦って最初に見つけたエージェントに登録した。そのエージェントは中小企業向けの低単価案件が中心で、提示された案件は月単価40万円台ばかりだった。
後から分かったことだが、エージェントによって得意領域が異なる:
自分のスキルセットに合ったエージェントを選ぶことが重要だ。私は2023年にレバテックフリーランスに登録し直し、月単価75万円の案件を獲得できた。
エージェント経由より直接契約の方が手取りは増える。ただし、営業力と信頼構築が必要だ。
直接営業の方法
直接営業は時間がかかるが、継続的に仕事をもらえるクライアントを1〜2社確保できれば、エージェント依存から脱却できる。
私の成功事例:過去の同僚からの紹介
2024年3月、正社員時代の同僚から連絡があった。「うちの会社で新規プロジェクトが始まるんだけど、エンジニアが足りない。手伝ってもらえない?」
この案件は月単価85万円(エージェント経由なら70万円程度)で、契約期間は1年。直接契約のため、エージェント手数料がかからず、手取りが大幅に増えた。
この成功の鍵は、「正社員時代の人間関係を大切にしていた」こと。退職時も円満退社し、同僚とは定期的に連絡を取っていた。人脈は最強の営業ツールだ。
案件を獲得するために、ポートフォリオは必須だ。
ポートフォリオに含めるべき要素
GitHubは「技術力の証明」として見られるため、以下を意識する。
私の失敗:GitHubを放置していた
2022年、エージェントの面談で「GitHubのアカウントを教えてください」と言われた。私のGitHubは3年前から更新しておらず、古いコードしかなかった。
エージェント担当者は言った。「GitHubが更新されていないと、『最新技術を学んでいない』と判断されます。定期的にコミットしてください。」
その後、私は週に1〜2回、学習した内容や自作アプリをGitHubにpushするようにした。2024年の面談では、「GitHubを見ましたが、しっかり学習されていますね」と評価され、高単価案件を紹介してもらえた。
1社だけだと案件の選択肢が狭まる。最低でも2〜3社に登録し、条件の良い案件を比較する。
私は現在、以下の3社に登録している:
案件が途切れたとき、複数のエージェントから同時に案件を提案してもらえるため、選択肢が広がる。
「できるだけ高単価で」と曖昧に伝えるのではなく、「月単価80万円以上、週5日稼働、リモート希望」と具体的に伝える。
エージェント担当者は数百人のエンジニアを担当しているため、曖昧な希望だと優先度が下がる。具体的な条件を伝えることで、マッチする案件を紹介してもらいやすくなる。
新しいスキルを習得したら、すぐにスキルシートに追加する。エージェントは定期的にスキルシートを見て案件を紹介するため、常に最新の状態に保つ。
私は2023年にAWSとDockerを学んだ際、すぐにスキルシートに追加した。その翌月、「AWS構築ができるエンジニアを探している」という案件を紹介され、月単価75万円で契約できた。
支払いサイトが長いと資金繰りが厳しくなるため、初回は「翌月末払い」を選ぶのが安全だ。
私の失敗:支払いサイトを確認しなかった
2022年の初案件は、支払いサイトが「翌々月15日払い」だった。7月に稼働開始したが、給与が振り込まれたのは9月15日。2ヶ月半も収入がゼロで、貯金を切り崩す日々だった。
その後、契約時には必ず支払いサイトを確認し、「翌月末払い」を選ぶようにした。資金繰りが楽になり、精神的にも安定した。
案件が途切れた場合に備えて、最低でも生活費6ヶ月分(100万円〜200万円)を用意しておく。
私は貯金50万円で独立し、3ヶ月で貯金が底をついた。焦って低単価案件を受けざるを得なくなり、年収が下がった。十分な貯金があれば、条件の良い案件を待つ余裕ができる。
フリーランスになると信用力が下がり、クレジットカードやローンの審査が通りにくくなる。会社員のうちに作成しておく。
私は独立後にクレジットカードを申し込んだが、審査落ちした。「フリーランス=不安定」と見なされ、信用力がゼロになっていた。
会計ソフト(freee、マネーフォワード)を導入し、経費の記録を習慣化する。税理士に依頼する場合は年間10万円〜20万円の費用がかかる。
私は初年度、確定申告を自分でやろうとして失敗した。経費の記録が不十分で、税金を多く払いすぎた。翌年から税理士に依頼し、年間15万円の費用はかかるが、節税効果でそれ以上のメリットがあった。
退職後14日以内に、国民健康保険と国民年金の切り替え手続きをする。任意継続(会社の健康保険を2年間継続)も選択肢の一つだ。
私は任意継続を選んだ。国民健康保険は年収に応じて保険料が変わるが、任意継続は会社員時代の保険料の2倍(上限あり)で固定される。私の場合、任意継続の方が年間10万円安かった。
ITエンジニアがフリーランスで年収800万円を超えるためには、以下の3つが重要だ。
フリーランスは自由度が高い一方で、リスク管理が求められる働き方だ。正社員時代に実務経験を積み、スキルを磨き、準備を整えてから独立することで、年収800万円は十分に達成可能だ。
私自身、2022年の失敗から学び、2024年には年収800万円を達成した。失敗を恐れず、準備を怠らず、市場価値の高いスキルを学び続ければ、誰でも高単価案件を獲得できる。